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エピジェネティクス:ヒストンH3.3セリン31のリン酸化はp300の活性とエンハンサーのアセチル化を促進する

Nature Genetics 51, 6 doi: 10.1038/s41588-019-0428-5

ヒストンバリアントH3.3は、マウス胚性幹細胞(mESC)において、エンハンサーや活発な遺伝子に加えて、テロメアやレトロエレメントなどの反復領域にも豊富に存在する。最近の研究で、反復領域でのヘテロクロマチン成立時にH3.3とそのシャペロンが果たす役割が明らかにされているが、転写調節におけるH3.3の機能については、まだよく分かっていない。本研究では、H3.3特異的なリン酸化が、アセチルトランスフェラーゼp300の活性をトランスに促進することを見いだし、H3.3はp300に対するヌクレオソーム補因子として働くことが示唆されたので報告する。mESCからH3.3を枯渇させると、エンハンサーにおけるヒストンH3リシン27のアセチル化(H3K27ac)が減少した。野生型細胞に比べると、H3.3を欠失した細胞では、分化の際に活性化されるエンハンサーをアセチル化する能力の低下と同時に、細胞運命を再プログラム化する能力の低下も見られた。我々の研究は、ヒストンバリアントの単一のアミノ酸が、シグナル伝達情報を統合でき、ゲノム調節に全体的な影響を与えることを明らかにしており、これらのタンパク質の変異が、ヒトがんに関与する仕組みについての理解を深める手助けとなるだろう。

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