Technical Report

クロマチン:ハイスループットのシングルセルChIP-seqから乳がんにおけるクロマチン状態の不均一性が明らかになる

Nature Genetics 51, 6 doi: 10.1038/s41588-019-0424-9

ヒストン修飾によるクロマチン構造の調節は、主要なエピジェネティック機構であり、それにより遺伝子発現が調節される。しかし、腫瘍の不均一性や進化において、クロマチンの特性がどのような役割を持つかは明らかになっていない。本論文では、クロマチンの全体的プロファイルを、単一細胞レベルの分解能で何千もの細胞について得られるハイスループット液滴マイクロ流体工学プラットフォームについて述べる。化学療法や標的療法に抵抗性を獲得した乳がんの患者由来腫瘍異種移植片モデルを用いることで、非治療の薬剤感受性腫瘍内の一部の細胞が、抵抗性細胞と共通のクロマチンシグネチャーを持つことが分かった。これは、大量細胞を用いる方法では検出できない内容であった。これらの抵抗性細胞と共通のクロマチンシグネチャーを持つ細胞と、抵抗性腫瘍由来の細胞には、治療への抵抗性を促進することが知られている遺伝子に、H3K27me3のクロマチン標識(安定な転写抑制に関連する)が見られなかった。このシングルセルChIP-seq(chromatin immunoprecipitation followed by sequencing)の手法は、がんだけでなく他の疾患や健康な系においても、特に細胞の分化や発生の際の、クロマチンの不均一性の役割を研究する道を開くものである。

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