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ワクチン:大規模な比較ゲノミクスによって集められたA群連鎖球菌ワクチン候補のアトラス

Nature Genetics 51, 6 doi: 10.1038/s41588-019-0417-8

A群連鎖球菌(GAS;Streptococcus pyogenes)は、ヒト用の市販ワクチンが作製できていない病原性細菌である。本研究では、ワクチン設計のためにハイスループットDNA塩基配列決定技術の利点を利用して、全世界からサンプリングした2083株のGASゲノムを解析した。GAS集団の遺伝学的構造を地球規模で比較すると、相同組換えによって引き起こされた高度のゲノム不均一性を示しており、この不均一性にはさらにアクセサリー遺伝子の高い可変性も加わっていることが分かった。病気に関係するゲノム系統群は、22カ国にわたって290以上に上ることが明らかになり、世界的に通用するワクチンを設計するに当たっての課題が浮き彫りとなった。ワクチン候補の範囲を決定するために、過去に報告されている全てのGAS抗原候補について、どの遺伝子を保有しているかと、遺伝子の塩基配列の多様性はどうなっているかを検討した。その結果、多様なGAS集団に対して、天然に生じた配列の多様性が少なく、かつ遺伝子が高い割合(> 99%)で保有されているものは、28種のワクチン抗原候補のうち15種のみであることが判明した。ワクチン候補の対象を決定するためのこの技術的基盤は、今後の研究により同定される有望なGASワクチン抗原にも同様に適用可能である。

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