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トマト:トマトのパンゲノム解析により、新たな遺伝子とトマト果実の香りを制御する希少対立遺伝子を発見

Nature Genetics 51, 6 doi: 10.1038/s41588-019-0410-2

現代の栽培種トマトは遺伝的多様性が限られているため、その品種改良には限界がある。我々は、系統的および地理的に代表的な725のトマトアクセッションのゲノム塩基配列を用いてトマトのパンゲノムを構築し、従来の参照ゲノム配列には含まれていない4873個の遺伝子を明らかにした。遺伝子の存在/非存在について多様性解析を行ったところ、トマトの栽培化や品種改良の過程で相当数の遺伝子喪失が起こったことや、遺伝子やプロモーターに強い負の選択圧がかかったことが明らかになった。消失した遺伝子、すなわち負の選択を受けた遺伝子には、重要な形質、特に病害抵抗性に関わるものが多く含まれていた。我々は、栽培化の過程で負の選択を受けたTomLoxCプロモーターの希少対立遺伝子を見いだした。量的形質遺伝子座のマッピングと形質転換植物の解析を行ったところ、TomLoxCタンパク質は、トマトの香りをよくすることに関係するアポカルテノイドの産生に貢献することが明らかになった。TomLoxCの希少対立遺伝子と高頻度対立遺伝子をヘテロ接合で有するトマトアクセッションは、いずれかの対立遺伝子をホモ接合で持つアクセションよりも、橙ステージの成熟段階にあるトマト果実におけるTomLoxCの発現量が多く、また、現代の栽培種トマトにこのTomLoxCヘテロ接合体の復活が認められている。このトマトのパンゲノムは、従来の参照ゲノム配列にさらなる深度と完成度を付加することとなり、今後の生物学的発見や品種改良に役立つはずである。

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