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クロマチン:トポロジカル関連ドメイン間の長距離相互作用により分化過程で四次元ゲノムが形作られる

Nature Genetics 51, 5 doi: 10.1038/s41588-019-0392-0

分化過程では、遺伝子発現を空間的かつ時間的に指示するために、ゲノム情報が選択的に用いられる。トポロジカル関連ドメイン(topologically associating domain;TAD)間や、クロマチンと核ラミナ間の相互作用により、染色体の構造が構築され、その核内での位置が決まる。しかし、これらのゲノム構造の構築因子群がどのように共同してゲノム構造を形作るのか、その仕組みは明らかではない。本論文では、2つの細胞系譜への分化系を用いて、長距離のTAD–TAD相互作用によって、構成的なTAD clique(小集団)と変化可能なTAD cliqueが形成されることを報告する。TAD cliqueとラミナ関連ドメイン(lamina-associated domain;LAD)の間の関係は分化の過程に関連付けられるので、TAD cliqueは核辺縁部でヘテロクロマチンを安定化すると考えられる。また我々は、マウス胚性幹細胞の分化の際や体細胞再プログラム化の際に見られるTAD clique動態を明らかにするとともに、単一細胞での高分解能Hi-C(chromosome conformation capture)データからTAD間の相互作用が起こっていることも明らかにできた。TAD cliqueは、発生遺伝子の抑制を強化する四次元レベルのゲノムコンホメーションである。

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