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再生医学:細気管支-肺胞接続部に存在する多能性幹細胞による肺再生

Nature Genetics 51, 4 doi: 10.1038/s41588-019-0346-6

肺の修復と再生に携わる幹細胞の特性解析は、肺疾患の治療に重要である。近年、細気管支と肺胞の接続部に特異的に局在する細胞集団が、肺再生のための内在性幹細胞を構成するとの説が浮上している。ところが、細気管支–肺胞境界領域の幹細胞(BASC)の生体内における役割については議論が続いており、このような細胞の肺再生への寄与は明らかになっていない。今回、CreとDreという2つの組換え酵素を用いた細胞系譜の遺伝学的追跡システムを考案し、BASCを生体内で特異的に追跡した。細胞運命マッピングおよびクローン特性分析の結果、BASCが、さまざまな肺損傷を受けると直ちに増殖し、肺再生に必要なクラブ細胞、繊毛細胞、1型および2型細胞上皮細胞といった複数の細胞系譜へと分化するようになることが明らかになった。今回の成果は、BASCが、肺修復および肺再生に際して多能性を発揮したり自己複製したりする、正真正銘の肺上皮幹細胞であるという、生体内における遺伝学的証拠となる。

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