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腫瘍内低酸素:さまざまな種類のがんにおける腫瘍内低酸素環境の分子標識

Nature Genetics 51, 2 doi: 10.1038/s41588-018-0318-2

多くの原発腫瘍では、部分的に酸素濃度が低い、いわゆる低酸素環境が生じている。低酸素環境にある腫瘍では、局所再発や遠隔部位への転移に対するリスクが上昇しているが、腫瘍内低酸素環境の分子レベルでの特徴は明らかになっていない。今回、このような情報不足を補うため、19種類の腫瘍について、8006の腫瘍の低酸素環境を定量的に示した。10種類の腫瘍では、低酸素環境はゲノム不安定性を伴っていた。19種類の腫瘍全てで、低酸素環境の腫瘍に特徴的なドライバー変異シグネチャーが認められた。また、さまざまな種類のがんで、低酸素環境に伴うマイクロRNA(miRNA)の調節不全を観察し、低酸素環境に関連したmiRNAとして、miR-133a-3pの機能を確認した。限局性前立腺がんでは、低酸素環境が、染色体粉砕、PTEN対立遺伝子の消失、およびテロメアの短縮の頻度上昇を伴っていた。このような事象が関連して起こることは、複数の異なるクローンから構成されている腫瘍に特に多く認められる。このポリクローナル腫瘍の特徴は、悪性度の高い細胞表現型の集合した状態である「腫瘍のnimbosus」(「暴風雨を伴う」を意味するラテン語)に類似している。今回の研究成果をまとめると、腫瘍の低酸素環境が、あらゆるがんにおいて分子レベルで悪性度の高い状態を生じさせ、各腫瘍の臨床上の経過を決定している可能性があることが明らかになった。

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