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白血病:PAX5の変化に起因する前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病のサブタイプ

Nature Genetics 51, 2 doi: 10.1038/s41588-018-0315-5

昨今のゲノム解析で明らかになった染色体再構成から、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)の新たなサブタイプが見つかった。しかし、多くの場合、どのような遺伝的変化ががん化の引き金になるのかは分かっていない。本論文では、小児および成人のB-ALL患者1998人を対象にしたゲノム統合解析を行い、染色体再構成や配列変異、あるいは多様なゲノム変化によって定義される指標を導入した、B-ALLの新たな分類法について述べる。この分類法によると、B-ALLには23のサブタイプがあり、これらのサブタイプの多くは年齢によって発生率に著しく差がある。2つのサブタイプでは、Bリンパ系細胞の転写因子であるPAX5遺伝子にしばしば変化が生じている。そのうちの1つはPAX5alt(7.4%)で、PAX5に多様な変化が生じている(再構成、遺伝子内増幅、変異)。もう1つのサブタイプは、PAX5 p.Pro80Argと両対立遺伝子のPAX5変異を特徴とする。我々は、p.Pro80ArgによってBリンパ系細胞の分化が損なわれ、両対立遺伝子性Pax5変異を有するB-ALL発生が促進されることをin vivo条件下で明らかにした。今回の結果は、トランスクリプトームの塩基配列決定がB-ALL分類に有用であることを明らかにするとともに、PAX5がBリンパ系細胞の成熟や白血病発症の際のチェックポイントとして中心的役割を果たすという認識を強化するものである。

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