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心電図:ヒト心電図形質に関連するNKX2-5遺伝子の対立遺伝子選択的結合

Nature Genetics 51, 10 doi: 10.1038/s41588-019-0499-3

ゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果から、心臓特異的な転写因子をコードするNKX2-5遺伝子は、心電図(EKG)形質との関連を有することが報告されている。しかし、NKX2-5と特異的結合を示す調節配列の高頻度バリアントのうち、どのバリアントがEKG形質に寄与しているかについては、まだ検討がなされていない。本研究では、7名の親族の細胞から樹立した人工多能性幹細胞を用いて心筋細胞を導出し、そのトランスクリプトームおよびエピゲノムのデータを解析することで、NKX2-5に対立遺伝子選択的に結合する一塩基バリアント(ASE-SNV)をおよそ2,000個同定した。これらのNKX2-5 ASE-SNVは、転写因子モチーフ、心臓特異的発現量的形質座位、およびEKG GWASシグナルに多く存在していた。また、このエピゲノムデータをfine-mapping法に適用し、原因バリアント候補を、EKG形質との関連性の強さに関して順位づけを行った結果、上位のバリアントの多くがNKX2-5 ASE-SNVであった。このうち、2つのNKX2-5 ASE-SNV(rs3807989およびrs590041)について実験による検証を行うことにより、心筋細胞において、これらがタンパク質との結合の差異を通して標的遺伝子の発現を変化させていることが分かった。このことは、それらがEKG GWASシグナルの中でも、機能バリアントであることを示している。本研究により、ゲノム全域にわたる多数の調節バリアントにおけるNKX2-5の結合の差異が、EKG形質に寄与していることが明らかとなった。

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