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統合失調症:統合失調症に関連する脳細胞型の遺伝学的同定

Nature Genetics 50, 6 doi: 10.1038/s41588-018-0129-5

統合失調症の遺伝学的基盤に関する知見は著しく増加しているが、わずかな例外を除けば、明確な実験モデルの作製に利用可能な信頼できる成果には至っていない。本研究ではシングルセルRNA-seq法を用いて脳細胞を分類し、その知見を基に、統合失調症に関連するゲノム座位が特定の型の脳細胞に結び付けられるのかどうかを評価した。遺伝学的解析によって同定された一般的なバリアントは、錐体細胞、中型有棘ニューロン(MSN)、およびある種の介在ニューロンに一貫して位置付けられたが、胚性細胞、前駆細胞、グリア細胞に位置付けられたものははるかに少なかった。このような発現の偏りは、それぞれの細胞型で特異的に発現している遺伝子セットに起因するものであった。また、これまでに統合失調症と関連付けられている多彩な遺伝子(シナプス機能に関与している遺伝子、FMRPと相互作用するmRNAをコードする遺伝子、抗精神病薬の標的遺伝子など)の多くは、概して同じ型の脳細胞に位置付けられることが分かった。これらの結果から導かれる結論は明快である。遺伝学的解析によって同定された統合失調症に関連する一般的バリアントは限られた神経細胞群で発現しており、一連の統合失調症関連遺伝子もまた同じ細胞群で発現している。MSNに関連した遺伝的リスクは、グルタミン酸作動性錐体細胞や介在ニューロンに関連したものとは重複しておらず、統合失調症における生物学的役割は細胞型によって異なることが示唆された。

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