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ウミヤツメ:ウミヤツメの生殖細胞系列ゲノム配列から、プログラムされたゲノム再構成と脊椎動物の進化についての手掛かりが得られる

Nature Genetics 50, 2 doi: 10.1038/s41588-017-0036-1

ウミヤツメ(Petromyzon marinus)は、脊椎動物の進化の過程を再現するための比較モデル生物の役割を果たしている。情報量の多い解析を可能にするために、いくつかの補完し合うデータセットを統合して、ウミヤツメの新しい生殖細胞系列ゲノムを構築した。この長く連続した配列(染色体規模)を解析したところ、6つのHOXクラスターを有する染色体が見つかるなどし、染色体重複と全ゲノム重複の両方が原始的な脊椎動物やウミヤツメのゲノムの進化において重要な役割を果たしていたことが判明した。また、構築した配列には、ウミヤツメの初期発生の間に体細胞から再現性よく除かれる数百の遺伝子が含まれていた。比較解析から、こういった遺伝子の顎口類(マウス)ホモログは多くの場合、胚性幹細胞においてポリコーム抑制性複合体(PRC)で標識されていた。この結果は、体細胞からのDNAの除去、および初期胚でのPRC制御によるbivalentな過程(活性化と抑制の相反する状態が維持されている状態)が、同じ調節の仕組みであることを示唆している。今回構築した配列は、ウミヤツメの独特な生物学的特性や進化予想、比較展望といったさまざまな研究を深めると期待される。

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