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前立腺がん:細胞内での区画化されたピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体の活性が、前立腺がんにおける脂質合成を維持している

Nature Genetics 50, 2 doi: 10.1038/s41588-017-0026-3

ミトコンドリアの代謝ががんの代謝(同化作用)を維持している機序はいまだに解明されていない。今回、遺伝子操作および薬理作用によってピルビン酸デヒドロゲナーゼ複合体(PDC)のサブユニットであるピルビン酸デヒドロゲナーゼA1(PDHA1)を不活性化すると、脂質合成が抑えられることで、マウス、そしてヒト異種移植腫瘍モデルマウスにおいて前立腺がんの進行が阻害されることを発見した。この機序を解明する中で、前立腺がんにおいて、PDCがミトコンドリアと核の両方に局在していることを明らかにした。核に局在するPDCは、ステロール調節配列結合性転写因子(SREBF)の標的遺伝子の発現を、ヒストンのアセチル修飾を介して調節している。一方、ミトコンドリアのPDCは、脂質合成と協調的に働き、脂質合成のためのクエン酸を細胞質ゾルに供給し、結果的に同化の継続に寄与している。さらに、前立腺がんではしばしば、PDHA1、そしてPDC活性化因子であるピルビン酸デヒドロゲナーゼホスファターゼ1(PDP1)が、遺伝子およびタンパク質の両方のレベルで増幅し、過剰発現していることが認められた。まとめると、今回得られた知見から、ミトコンドリアと核の両方のPDCが脂質生合成を調節することで前立腺の腫瘍形成を維持していることが明らかになり、結果としてこの複合体ががん治療における有望な標的であることが示唆された。

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