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発生分化:レチノイン酸とBMP4はp63と協調して、表層上皮への方向付けの過程でクロマチン動態を変化させる

Nature Genetics 50, 12 doi: 10.1038/s41588-018-0263-0

ヒト胚性幹細胞(hESC)を分化させることは、再生医療を進歩させる大きな可能性があるが、hESCの移植可能な細胞や組織への変換についてはほとんど分かっていない。本論文では、我々の角化細胞分化系を用いて、多次元ゲノミクスの手法により、表層外胚葉への発生運命方向付けに対する誘導モルフォゲンのレチノイン酸と骨形成タンパク質4(BMP4)、および表皮のマスター調節因子p63(TP63にコードされる)の関与について調べた。p63は、他のマスター調節因子とは対照的に、モルフォゲンがクロマチン接近性を変化させた後にのみ、重要な転写変化を生じさせ、p63によるエピジェネティックな全体像が確立された。p63は遠位のクロマチンの接近可能な部位を閉じさせ、H3K27me3(トリメチル化されたヒストンH3リシン27)の蓄積を促進する。染色体コンホメーションのコヒーシンHiChIP法による視覚化から、p63とモルフォゲンが長距離の動的なクロマチン相互作用に関与することを、TFAP2Cの調節を例として示す。我々の研究は、p63のモルフォゲンシグナル伝達への依存という予想外の発見を報告するとともに、特定のモルフォゲンへの曝露によって誘導されるクロマチンの状態に基づいて、マスター調節因子が多様な転写プログラムを指定できる仕組みについての新しい手掛かりを示している。

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