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リンパ腫:TIM-3の機能を変化させるHAVCR2の生殖細胞系列変異が、血球貪食リンパ組織球増多症候群を併発している皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫の病態を決定している

Nature Genetics 50, 12 doi: 10.1038/s41588-018-0251-4

皮下脂肪織炎様T細胞リンパ腫(subcutaneous panniculitis-like T cell lymphoma:SPTCL)は非ホジキンリンパ腫の1つで、血球貪食リンパ組織球増多症(hemophagocytic lymphohistiocytosis:HLH)を併発していることがある。HLHでは重篤な免疫活性化が起こり、この病態は生存に不利に働く。T細胞免疫グロブリンムチン3(TIM-3)は、T細胞および自然免疫担当細胞の一部の細胞表面に発現している免疫応答の調節因子である。今回、SPTCLの症例のおよそ60%で、生殖細胞系列に機能喪失型ミスセンスバリアントを同定した。これらのバリアントには、TIM-3の種間保存度が高い残基に次のような変更が起こっている:c.245A>G(p.Tyr82Cys)およびc.291A>G(p.Ile97Met)。また、それぞれは特異的な地理分布を示している。すなわち、p.Tyr82CysをコードしているTIM-3バリアントは、東アジア系やポリネシア系の患者の創始者染色体候補に生じている。一方、p.Ile97MetをコードしているTIM-3バリアントは、ヨーロッパ系患者に生じている。これらのバリアントは共にタンパク質の折りたたみに誤りを生じさせ、細胞膜上のTIM-3の発現を無効にする。その結果、持続的な免疫活性化と、腫瘍壊死因子αやインターロイキン1βなどの炎症性サイトカインの産生増加が引き起こされ、HLHとSPTCLが促される。今回得られた知見は、新たな遺伝子疾患としてのHLH–SPTCLの理解を深め、SPTCLの病因となる遺伝子異常であるTIM-3の機能変化をもたらす変異を特定するものである。変異型TIM-3を持つHLH–SPTCL患者の治療には免疫調節が有効であるが、TIM-3チェックポイントの抑制を治療の標的にするのは有害である可能性がある。

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