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酵母:酵母育種株と野生株の間に見られるゲノム進化動態の違い

Nature Genetics 49, 6 doi: 10.1038/ng.3847

構造の再編成は、遺伝的多様性(表現型の相違や疾患を含む)を生み出す重要な要因と長らく考えられてきた。しかしながら、その詳細な進化上のダイナミクスはいまだ明確になっていない。本論文ではロングリードの塩基配列決定法を行い、12の酵母株について、端から端までのゲノム構築を行った。これらは、育種がある程度行われている酵母であるSaccharomyces cerevisiaeとその野生型近縁種Saccharomyces paradoxusの主要な亜集団を代表する12株である。このような高品質で包括的なアノテーション付きのゲノム配列が集団レベルで得られたことにより、染色体のコア領域とサブテロメア領域との間を占める境界領域の正確な定義や、進化の過程におけるゲノムの変化を高解像度で検証することが可能になった。染色体コアにおいては、S. paradoxusの場合には均衡型再編成(逆位、相互転座、転位)の速やかな蓄積が認められたが、S. cerevisiaeの場合は不均衡型再編成(新規の挿入、欠失、重複)が迅速に蓄積した。一方、サブテロメアでは、両方の種で広範な染色体間再編成が起こり、その速度はS. cerevisiaeの方が速かった。育種されている酵母と野生種との著しい差異は、ゲノムの構造変化に対する人為的影響を反映している可能性が高い。

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