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がんドライバー遺伝子:進行期EGFR変異型肺がんに共存する遺伝的変化が進化および治療に及ぼす影響

Nature Genetics 49, 12 doi: 10.1038/ng.3990

現代のがん治療に広く用いられている手法では、単一の発がん性ドライバー遺伝子を同定して、その変異型タンパク質産物を標的とする(例えば、EGFR変異型肺がんのEGFR阻害剤治療)。しかし、標的療法に対して遺伝的に引き起こされる耐性があり、これが患者の生存の制約となる。本論文では、EGFR変異型肺がんの無細胞DNA試料1122のゲノム解析、およびEGFR変異型肺がん患者1人から長期的に採取した7つの腫瘍試料の全エキソーム解析から、ほとんどの進行期EGFR変異型肺がんには発がん事象の共存が見られ、その事象が重要な影響力を示すことを見つけたので報告する。WNT/βカテニンの変化や細胞周期遺伝子(CDK4およびCDK6)の変異をはじめ、EGFR阻害剤への応答を制限する複数の新しい経路が明らかになった。EGFR阻害剤投与により腫瘍ゲノムの複雑性が増し、CTNNB1PIK3CAに見られる遺伝的変化の共存が、互いに重複しない機能を示し、協調的に働くことで腫瘍転移を促進したり、EGFR阻害剤への応答を制限したりした。この研究により、一般的な単一の発がんドライバー遺伝子という考え方の再検討が求められることを示すとともに、進行期EGFR変異型肺がん患者における臨床転帰を遺伝的変化共存に関連付けることができる。

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