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腫瘍進化:ヒトがんの正および負の選択についてのベイズ推定

Nature Genetics 49, 12 doi: 10.1038/ng.3987

がんゲノムの研究から、発がんおよび腫瘍進展の原因となる遺伝子や調節配列が同定されている。小進化という観点からすると、これらは正の選択を受けている。一方で、最新の研究でもなかなか検出しにくいものの、野生型のコード配列が腫瘍の増殖に必要とされる遺伝子も、極めて重要かつ興味深いものである。これらの遺伝子は、変異が絶え間なく生じるという選択圧の条件下で、負の選択を経て、変異が生じていない状態を保っていると思われる。著しく変異が生じている(またはそれほど変異が生じていない)遺伝子の検出は、がん関連変異がゲノム不均一性を示すため、極めて複雑になる。本論文では、コード領域の点変異についてのモデリングを可能にする階層フレームワークを提示する。このモデルを17種類のがんの塩基配列解読データに当てはめることにより、既知の発がん遺伝子(がんドライバー遺伝子)に対する検出力が向上したことを示すとともに、生物学的機能を有する見込みが極めて高い遺伝子で高頻度に変異しているものを同定することができた。負の選択下にあるという証拠となるシグナルは非常に目立たないものの、いくつかのタイプのがんや、さまざまながんを含む全がんのデータセットで検出可能である。このようなシグナルは、がんにおける機能がすでに明らかな遺伝子ばかりでなく、CRISPRスクリーニングで同定される細胞必須遺伝子に多く見られる。

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