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ヒストン:Trrおよび哺乳類のCOMPASS様タンパク質が触媒するエンハンサーでのヒストンH3K4のモノメチル化は発生と生存に必須ではない

Nature Genetics 49, 11 doi: 10.1038/ng.3965

ヒストンH3のリシン4のモノメチル化(H3K4me1)は、エンハンサーのクロマチンにおいて進化的に保存された特徴であり、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)ではTrr、哺乳類ではMLL3(KMT2Cにコードされる)およびMLL4(KMT2Dにコードされる)といった、COMPASS様メチルトランスフェラーゼファミリーによって触媒される。ここでは触媒活性を欠損したTrrを発現するショウジョウバエ胚が、孵化して繁殖可能な成虫にまで成長できることを実証する。並行実験として、酵素の産物特異性を増強させるようなtrr対立遺伝子を用いた実験では、エンハンサーのH3K4me1をH3K4me2およびH3K4me3に変化させても、やはり生存が可能であり、遺伝子の発現もほとんど影響を受けないことを示している。マウス胚性幹細胞(mESC)でも同様に、MLL3およびMLL4の触媒ドメインであるSETを欠失させても、自己複製能は阻害されない。触媒活性の変異体をコードするtrr対立遺伝子を持つショウジョウバエ胚は、温度ストレスやコヒーシンレベルの変化により、わずかな発生異常を呈する。まとめると、Trrまたは哺乳類のCOMPASS様タンパク質がH3K4モノメチル化活性を欠損していても、動物の発生は起こり得ることを我々の知見は示しており、特定の条件において、シス調節エレメントのH3K4me1が環境ストレスに応答して転写調節を微調整している可能性が示唆される。

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