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エピジェネティクス:初期胚での一過性の転写がエピジェネティックな状態を設定して生後の成長をプログラムする

Nature Genetics 49, 1 doi: 10.1038/ng.3718

初期胚において、成体での生理学的性質に影響を及ぼすエピジェネティックな状態をプログラムする可能性のある事象は、健康や発達に関する重要な疑問でありつづけている。本論文では、表現型の初期プログラムの枠組みとして、インプリンティングされたZdbf2座位を用いて、多能性のある胚で起こるクロマチンの変化が、胚形成には必要ない可能性があるが、成体での調節情報には不可欠なシグナルであることを示す。LizZdbf2の長いアイソフォーム)転写産物は初期胚や胚性幹細胞(ESC)において一過性に発現する。この転写は局所的にZdbf2プロモーターの上流のde novoのDNAメチル化を促進し、これがZdbf2のポリコームによる抑制に拮抗する。特に、Lizを欠損するマウス胚は、正常に発生するが、生後の脳でZdbf2を活性化できず、生涯にわたって成長の低下を示すことから、Liz依存性のエピジェネティックなスイッチが重要な役割を担っていると考えられる。この研究は、初期胚という時間的枠組みでの転写が、安定したエピジェネティックな状態をプログラムでき、後の生理学的結果に影響を及ぼす証拠を示している。

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