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脂肪蓄積能:ヒトのインスリン抵抗性の原因として末梢における脂肪蓄積能の関与が、統合ゲノム解析により明らかになった

Nature Genetics 49, 1 doi: 10.1038/ng.3714

インスリン抵抗性は、肥満に伴う心血管系代謝疾患の重要なメディエーターであるが、これらの結び付きの詳しい機序についてはいまだ明らかになっていない。ゲノム関連解析の統合解析を行い、インスリン抵抗性の表現型(BMIで補正済みの空腹時インスリンレベルの上昇、HDLコレステロールレベルの低下、トリグリセリドレベルの上昇)に関連を示す53のゲノム領域を同定した。そして、これらのインスリン抵抗性関連ゲノム領域が末梢組織コンパートメントにおける脂肪量の低下と関連することにより、心血管代謝リスクの上昇と結び付くことを示した。これらの53の座位を用いて、高度のインスリン抵抗性が認められる1型家族性限局性脂肪萎縮症(リポジストロフィー)が多因子疾患であることを示し、さらに、出現頻度が高く症状が中等度のインスリン抵抗性と、頻度がまれで症状が高度な抵抗性において分子機序が共有されていることを明らかにした。集団を用いた遺伝学的解析と細胞モデルを用いた実験的検証を行ったところ、これまで脂肪細胞分化に影響を及ぼすことが知られていなかった分子としてCCDC92、DNAH10、L3MBTL3を見いだした。今回の知見は、末梢脂肪組織の脂肪蓄積能の限界が、インスリン抵抗性による心血管代謝疾患の重要な病因であるという見解を支持し、この因果関係を裏付ける遺伝子群や機序を浮き彫りにするものである。

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