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ミトコンドリア:動物のミトコンドリアゲノムの競い合いにおいて利己的な選択が機能をしのぐ

Nature Genetics 48, 7 doi: 10.1038/ng.3587

ミトコンドリアゲノムは母から子への継承に際して競い合う。このゲノム間競合を調べるため、第2のゲノムをキイロショウジョウバエDrosophila melanogasterに導入してその継承状況を追跡した。近い系統のゲノム間競合では、電子伝達系での機能が有利に働き、結果的に宿主に有益な純化選択が起こった。それに対して、遠い系統のゲノム間競合の多くでは、その影響がわずかであるか、負に働くか、致死性である場合が好まれ、利己的選択が起こることが示唆された。強力な利己的選択が起こる場合には、有害変異を保持するゲノムが相補ゲノムに取って代わり、数世代後に集団死を招いた。異なる組み合わせの場合、反対向きに働く利己的選択と純化選択が相殺し、2つのゲノムが安定して継承された。組換えミトコンドリアゲノムの塩基配列決定から、複製起点を含む非コード領域が利己的継承に影響を与えることが分かった。片親性の遺伝により、遠い系統のゲノム間の競合は回避される。しかしながら、それぞれの母系統において、同胞ゲノム間の定常的な競合が起こり、超複製因子が選択されている。本研究成果は、この絶え間なく続く競合が正の選択の原動力となり、継承に影響をおよぼす配列変化を推進していることを示唆するものである。

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