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抗生物質耐性:抗生物質ストレス下の細菌の生存に果たすGATCメチロームの役割

Nature Genetics 48, 5 doi: 10.1038/ng.3530

抗生物質に対する耐性は、公衆衛生上の脅威としてますます深刻さを増している。細菌が抗生物質というストレス下を生き残る経路を解明すれば、新たな治療標的が明らかになるだろう。従来の遺伝学的解析ツールと一分子リアルタイム塩基配列決定法を用いて、ゲノムメチル化動態の特性解析を行い、細菌が抗生物質ストレス下を生き残る上でそのエピゲノムの果たす役割を詳細に調べた。その結果、GATC配列のアデニンがメチル化されていないと、抗生物質添加時の大腸菌Escherichia coliの生存が大幅に損なわれることを発見した。ここで、薬剤ストレスにさらされてもアデニンメチロームそのものに変化はなかった。ところが、GATC配列がメチル化されていない場合には、メチル基に依存したミスマッチ修復(MMR)が起こらず、さらに、薬剤に誘発された誤りが起こりやすいポリメラーゼPol IVの作用が高まり、有害なDNA切断が細胞にダメージを与えた。病原性および薬剤耐性の臨床分離菌株を含む複数の大腸菌株で、DNAアデニンメチルトランスフェラーゼが欠損すると、βラクタム系およびキノロン系の抗生物質の効果が増強した。今回の結果は、GATCメチロームが、抗生剤ストレス下の細菌の生存を可能にしている構造的な特性を与えていることを示し、細菌のDNAメチル化を研究対象とすることが、既存抗生物質の治療有効性を高めるための実行可能なアプローチであることを示唆している。

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