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微生物:リステリア(Listeria monocytogenes)の生物多様性を利用することでその高病原性を明らかにする

Nature Genetics 48, 3 doi: 10.1038/ng.3501

微生物の病原性についての研究は一般的に参考株において行われるので、微生物の病原性における種内の不均一性は見落とされてしまう。本論文では、ヒトの疫学データと臨床データと細菌の集団ゲノミクスを統合して、食品媒介性モデル病原菌であるリステリア(Listeria monocytogenes)の生物多様性の知見を基に、リステリアの神経向性および胎盤向性の基盤を解明する。この細菌種のクローン構造を利用して、食品媒介性リステリア症、ヒト中枢神経系(CNS)感染リステリア症、母親-新生児(MN)感染リステリア症のいずれかと疫学的に関連するクローンを同定した。CNSやMNに関連するクローンはまた、免疫抑制性の併存疾患がない患者に最もよく見られた。特に、CNSやMNに関連するクローンが、リステリア症のヒト化マウスモデルで高病原性を示すことが分かったことは重要である。疫学データと比較ゲノミクスを統合することで、複数の新しい推定病原性因子が明らかになり、また、リステリアの神経向性および胎盤向性を仲介する初めての遺伝子クラスターの寄与を実験的に実証した。この研究は、臨床に関連する微生物病原性の特性を明らかにするために、微生物の生物多様性の利用が非常に大きな検出力を持つことを示している。

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