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レギュローム:細胞系譜特異的および単一細胞でのクロマチン接近性からヒトの造血や白血病の進化を図示する

Nature Genetics 48, 10 doi: 10.1038/ng.3646

造血の階層構造全体にわたる13種類の初代培養ヒト血液細胞において、クロマチン接近性の全体像と転写の全体像を明らかにした。mRNAレベルではなくエンハンサーの全体像を捉えることが細胞の独自性をよく反映するという知見を拡張して、複雑な細胞集団に含まれる純粋細胞種を数えあげる「エンハンサーサイトメトリー」を行った。その結果、造血系の分化を支配する調節因子を同定し、さらに、さまざまなヒト疾患に関連する遺伝要因の細胞系譜特異的な発生を明らかにした。急性骨髄性白血病(AML)では、変異の負荷を次第に増加させるというがん細胞における独特の制御系の進化が見られることが、クロマチン接近性から明らかになった。単一AML細胞解析では、異なる発生段階に対応して、異なるレギュローム(regulome)プロファイルの混合が見られることが分かった。調節の不均一性を考慮するこの方法から、がん特異的な逸脱が明らかになり、またHOX因子群が、前白血病状態の造血幹細胞に特徴的な調節因子として極めて重要であることが示された。従って、レギュロームの動態は造血系の発生や疾患を理解するうえでさまざまな手掛かりを与えてくれるものである。

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