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調節配列の進化:ショウジョウバエDrosophila属の5種についてゲノムワイドの定量的エンハンサー活性地図を作成し、シス調節性の進化における機能的エンハンサーの保存とターンオーバーを明らかにした

Nature Genetics 46, 7 doi: 10.1038/ng.3009

近縁種間で観察される表現型の違いは主に、遺伝子発現をシス(cis)に調節する塩基配列(エンハンサー)に生じた変異によって、遺伝子発現に変化が生じたことに起因すると考えられる。しかし、変異によってどのくらいの頻度で、エンハンサー活性に変化が生じるのか、もしくは、機能を持たない配列から機能するエンハンサーが新たに(de novo)作り出されるのかについては、依然として明らかになっていない。本論文では、最近開発されたSTARR-seq法を用いて、キイロショウジョウバエDrosophila melanogaster S2細胞において、トランス(trans)調節が定常状態にある条件下でエンハンサーの定量解析を行い、5種類のショウジョウバエ属のゲノム全域におけるエンハンサー活性のプロファイルを解析した。その結果、エンハンサーの転写因子モチーフが選択を受けて、入れ替わり(ターンオーバー)が起こることにより安定が生じることによって、キイロショウジョウバエD. melanogasterのエンハンサーの大部分の機能は、そのオーソロガス配列において保持されていることが判明した。一方、およそ1,100万年前にキイロショウジョウバエとヤクバショウジョウバエD. yakubaが分岐した以降、数百ものエンハンサーが明らかな適応選択を経ることなく新しく作り出されており、これら新生エンハンサーがin vivoにおける遺伝子発現の違いに関係している可能性があることが分かった。今回得られた知見、すなわちエンハンサー活性が多くの場合は種間で高度に保存されていると同時に高い頻度で新規に生じていることの発見は、遺伝子発現調節の進化の仕組みを探る際の手掛かりとなるものである。

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