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薬剤耐性結核:ロシア人集団における薬剤耐性結核の進化および伝播

Nature Genetics 46, 3 doi: 10.1038/ng.2878

ある集団における薬剤耐性結核の伝播率や有病率を決定する分子機構を検討するため、ロシアの患者から前向き研究として集められた1,000の臨床分離株について、全ゲノム塩基配列決定を行った。その2/3が北京型株に属していた。このような北京型株では、2つの均一な分岐群が大部分を占めていた。多剤耐性(MDR)遺伝子型が、全分離株の48%および主要な分岐群の87%に見られた。最も一般的なrpoB変異は、rpoAあるいはrpoCにおける適応度の補償的な変異に関連しており、また、rpoB遺伝子内の新しい補償的な置換が同定された。超薬剤耐性(XDR)結核のMDR症例の割合は全体の16%で、MDR分離株の65%にカナマイシン治療によって選択されるeis変異が見られた。これが毒性の増強された株の拡大を引き起こしている可能性がある。主要な分岐群が示す薬剤耐性および補償的な変異の組み合わせにより、適応度および伝播率を低下させずに、臨床耐性が付与されることから、結核管理プログラムの弱点に加え、生物学的要因が、ロシアやさらに他の地域でのMDRおよびXDR結核の持続および拡大を引き起こしていることが示される。

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