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X染色体:ヒトおよびマウスのX染色体に別々に生じた雄性生殖細胞系列の特化

Nature Genetics 45, 9 doi: 10.1038/ng.2705

ヒトおよびマウスのX染色体を比較し、X染色体上の遺伝子は胎盤哺乳類のすべてにわたって保存されているとする、大野の法則を系統的に検証した。まず、ヒトX染色体参照配列の精度を高めるために、アンプリコン領域の単一ハプロタイプ塩基配列決定を行った。この塩基配列決定の結果、参照配列に存在していたギャップが埋まり、これまで誤ってアセンブリされていた領域が修正された。さらに、パリンドローム構造をとるアンプリコン領域の存在が新たに明らかになった。そして、引き続いて行った解析から、以下に示すように、ヒトおよびマウスのX染色体はともに、2種類の様式で進化したという結論が得られた。X連鎖型の単一コピー遺伝子の場合は、大野の法則と一致して、94~95%がヒトとマウスで共通であり、大部分の遺伝子は雌雄両性で発現している。ところがX染色体のアンプリコン遺伝子の大半は、注目すべきことに、大野の法則に当てはまらない。すなわち、Xアンプリコン遺伝子のうち、もう一方の生物種においてオーソログ遺伝子が存在する遺伝子は、ヒトでは31%、マウスでは22%に過ぎなかった。ここで、Xアンプリコン遺伝子は主に精巣の生殖細胞で発現していた。これらの遺伝子の多くは、ヒトとマウスの共通祖先からの分岐以後に、別々に獲得されていたと考えられ、X染色体上の精子産生に特化した領域に存在する。

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