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大腸腺がん:大腸腺がんのゲノム塩基配列決定により、
VTI1A-TCF7L2の融合が繰り返し同定された

Nature Genetics 43, 10 doi: 10.1038/ng.936

過去の研究では大腸腺がんにおいてがん遺伝子の変異が繰り返し起こることが同定され、11人の患者でタンパク質をコードする遺伝子のエキソンに変異がないか精査されてきた。今回我々は、9人の大腸がんの患者の大腸がん原発組織と、対応する隣接の非がん組織を、それぞれ平均30.7xと31.9xのカバー率で全ゲノム塩基配列決定した。1つの腫瘍について、染色体間の複雑な転位を含む平均75の体細胞ゲノム再編成を同定した。11の再編成は予測された翻訳領域内の融合タンパク質をコードしており、この中には97の大腸がんのうち3つで見つかったVTI1ATCF7L2の融合が含まれていた。TCF7L2は、大腸がんの発生においてβカテニンと協調して働くTCF4をコードしているが、融合タンパク質ではTCF4βカテニン結合ドメインを欠いている。我々は、RNA干渉による遺伝子ノックダウンを用いて足場非依存性増殖の欠損を調べることにより、VTI1A-TCF7L2融合遺伝子を持つ大腸がん細胞株を見いだした。この研究は、これまでには見つかっていなかった大腸がんのゲノム再編成が、本質的な遺伝子融合やがん発生に至るほかの事象を導きうることを示すものである。

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