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マンモスの進化:ケナガマンモスのヘモグロビンは耐寒性に適応する生化学的な特徴を備えている

Nature Genetics 42, 6 doi: 10.1038/ng.574

ケナガマンモス本来のヘモグロビンを遺伝学的に回収し、復元し、詳細な構造と機能の関係を解析し、絶滅種における適応的な生理化学的な形質についての進化的な起源と構造的な根拠の両方を初めて明らかにした。ヘモグロビンはO2を結合し、運搬する。しかし、細胞呼吸のためにO2を放出する能力は、ヘムの酸素遊離反応が吸熱性(すなわち、ヘモグロビン-O2の親和性は温度が低下するほど高まる)なので、低温では妨げられる。マンモスのヘモグロビンβ/ δキメラで、この表現型に大きく作用するアミノ酸の置換を同定し、これがエネルギー的にも高価につく熱の損失を最少限にして、この問題の独特な解決法となっていることがわかった。このような生化学的な種分化は更新世期で、このアフリカ起源のゾウの系統が高緯度環境へ移動したことにもかかわっていたと考えられる。絶滅種での生理学的な適応の遺伝学的、構造的な直接の解析は、自然選択の研究に重要な新たな展開をもたらすものである。

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