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ペスト菌:ペスト菌(Yersinia pestis)ゲノム塩基配列決定により、全世界の系統学的な多様性の分布が明らかにされた

Nature Genetics 42, 12 doi: 10.1038/ng.705

ペストは、細菌(Yersinia pestis、ペスト菌)によって世界的な流行が引き起こされる人に感染する病気である。世界中からペスト菌の17の標本を集め、全ゲノム塩基配列の比較したので報告する。世界中のペスト菌を集めた286の標本を、シケノム社製のMassArray SNP解析装置を用いて解析し、933のSNPを同定した。この配列の違いを示すデータを元に系統学的な解析を行い、これらのデータから最小突然変異系統樹作成法にもとづき、それぞれの個体が属する集団を決め、ペスト菌の歴史的な伝染経路を推測した。この系統学的な解析からペスト菌の起源は中国の近くで、多数の経路を経てヨーロッパ、南米、アフリカ、東南アジアに広がり、それぞれの系統に特異的なSNPによって追跡可能なそれぞれの国に特有な系統に至ったことが示唆される。これまでに米国で単離された626のペスト菌はすべて、1つの伝搬経路によっており、マダガスカルから単離された82は第2の伝搬経路によっている。その後のペスト菌には各地で引き続き起こった地理学的に特有なSNPの微小進化が記されている。

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