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脳の発生:βチューブリン遺伝子TUBB2Bの突然変異は非対称性の多小脳回症を引き起こす

Nature Genetics 41, 6 doi: 10.1038/ng.380

多小脳回は、比較的よくみられるが、あまり解明の進んでいない大脳皮質の形成異常であり、多数の小さい脳回や、正常な層構造が形成されないために肥厚して乱れた構造をとる皮質板を特徴とする。本論文では、両側性の、非対称性多小脳回がみられる患者4名と妊娠27週の胎児の、βチューブリン遺伝子TUBB2Bに生じた新生変異について報告する。まず、胎児の神経病理学的検査を行い、皮質の層構造の乱れは、軟膜の基底膜に裂け目(ブリーチ)が生じたため、異所性神経細胞が白質や軟膜腔(クモ膜下腔)に存在するようになったことに関係していることを明らかにした。また、RNAiを用いてTUBB2Bを子宮内で不活化し、この遺伝子が神経細胞の移動に必要なことを示した。さらに、多小脳回の原因となる2つの突然変異によってチューブリンダイマーが形成されなくなることを観察した。今回の知見は、これまでに得られた結果とあわせて、微小管の機能に依存した過程が損なわれることで、神経細胞の移動にかかわる広範囲の疾患が引き起こされ、そのような疾患には、滑脳症や脳回肥厚症に加えて、多小脳回といった形成異常も含まれることを示すものである。

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