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鉄代謝:BMP6はヘプシジン発現および鉄代謝の主要な内因性調節因子である

Nature Genetics 41, 4 doi: 10.1038/ng.335

若年性ヘモクロマトーシスは、鉄が過剰に蓄積する疾患であり、主要な鉄量調節ホルモンであるヘプシジンをコードしている遺伝子(HAMP)と、ヘモジュベリンをコードしている遺伝子(HFE2)に、変異が生じたことで惹起される。我々はこれまでに、ヘモジュベリンが骨形成タンパク質(BMP)の補助受容体であること、そして、BMPのシグナルを介してヘプシジン発現および鉄代謝が調節されていることを明らかにしている。ところが、in vivoにおいてヘプシジン発現を調節する内因性BMPがどのようなものであるかは不明であった。本論文ではまず、in vitroにおいては、ヘモジュベリンのホモログであるDRAGONの可溶型(DRAGON.Fc)は、可溶型ヘモジュベリン(HJV.Fc)よりも、BMP2やBMP4によるヘプシジンの発現誘導を強力に阻害するが、BMP6による誘導に対しては阻害作用が弱いことを示した。続いて、in vivoでは、HJV.Fcや、BMP6に対する中和抗体によって、ヘプシジン発現が阻害され、血清鉄が増加することを観察した。それに対して、DRAGON.Fcは何ら効果を示さなかった。そして注目すべきは、Bmp6ヌル変異マウスが、ヘプシジン発現の低下および組織での鉄過剰といった、遺伝性ヘモクロマトーシスによく似た症状を呈したことである。最後に、HJV.FcとBMP6とが物理的に相互作用していること、さらに、BMP6がマウスにおいてヘプシジン発現を増加させ、血清鉄を減少させていることが明らかになった。以上の結果はBMP6が、ヘモジュベリンのリガンドとして、さらに、生体内におけるヘプシジン発現と鉄代謝の内因性調節因子として重要な役割を果たしていることを裏付けるものである。

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