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細胞増殖とNotchシグナル伝達:ポリホメオティックタンパク質はNotchシグナル伝達を阻害することによって腫瘍抑制活性をもつ

Nature Genetics 41, 10 doi: 10.1038/ng.414

ポリコーム群(PcG)タンパク質は、発生過程で重要な役割を果たす遺伝子群の発現を抑制し、細胞増殖を調節している。本論文では、ショウジョウバエDrosophila melanogasterの眼をモデルシステムとして、そのPcGタンパク質であるポリホメオティック(PH)タンパク質をコードしている遺伝子座(ph)に変異が生じた細胞では、過増殖が観察され、分化能と極性の両方が失われていることを明らかにする。このような変異細胞は隣接細胞を浸潤し、さらにがん原遺伝子であるRasが活性型である場合には、転移するようになる。PcGタンパク質はNotchシグナル伝達経路を構成する複数遺伝子に結合し、その転写はもとより、シグナル伝達をも制御する。ph変異細胞のクローンに生じる、巨大なサイズの細胞自律的な過増殖は、ドミナントネガティブ型のNotchを異所性発現させたり、RNA干渉(RNAi)によってNotchの発現を抑制したりすると、回避できる。逆に、phを過剰発現させると眼球が小さくなるが、Notchシグナル伝達を活性化すると、標準サイズとなる。以上の結果から、phは腫瘍抑制を担う遺伝子座であり、Notchシグナル伝達に関与する複数の遺伝子を抑制することによって細胞増殖を制御していることが明らかになった。

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