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逆位と進化:MAPT17q21.31逆位領域の進化上の変遷

Nature Genetics 40, 9 doi: 10.1038/ng.193

DNAの塩基配列の比較を利用して、ヨーロッパ人によくみられる17q21.31 MAPT遺伝子座の逆位領域の多型の進化過程を調べた。ヒトの逆位したH2ハプロタイプの塩基配列をBACベクターを使って構築し、それと対応する逆位を起こしていないヒトおよびチンパンジーとオランウータンのH1ハプロタイプの1.5 Mb領域の塩基配列の並び方とその相違を比較する。MAPT遺伝子座の逆位は他の類人猿の種でも同様に多型を示していることがわかり、逆位が、ヒトとチンパンジーでは独立に起こったことの証拠を示す。ヒトでは、逆位の起こった繋ぎ目(切断点)はLRRC37遺伝子ファミリーのコアとなる重複と一致している。この解析からH2領域の配置とハプロタイプの塩基配列はおそらく類人猿とヒトの共通の祖先と思われるものからの由来で、類人猿の進化途上、逆位が頻繁に繰り返されたことを支持している。H2領域の構造はより広範囲な塩基配列の相同性へと進化し、おそらくヨーロッパ人種では知能の遅滞をもたらす小さな欠失が起きやすい傾向にあったと示唆される。

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