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適応進化:出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeの無性生殖集団の適応進化におけるクローン間競合についての分子レベルの特性解析

Nature Genetics 40, 12 doi: 10.1038/ng.280

無性生殖集団における従来の適応進化のモデルでは、適応したクローンのそれぞれは先行クローンから生じると仮定している。ところが実験的な証拠からは、有益な突然変異の固定される確率が突然変異率、集団サイズ、突然変異の選択係数により決められるという理論の存在をはじめ、もう少し複雑な動態が示唆されている。ここで、クローン干渉(clonal interference、有益変異クローン間の競合関係)がウイルスや細菌において証明されているが、真核生物では知られていない。また、その詳細な分子レベルでの特性解析はなされていない。本論文では、3種の異なる蛍光マーカーを用いて無性生殖的に進化途上の酵母集団の動態を可視化した。そして、その進化の過程を観察した集団の1つを構成する適応クローンそれぞれについて、適応を可能にした突然変異を同定し、その集団における頻度の推移を測定し、マイクロアレイを用いてトランスクリプトームにおける変化の特性解析を行った。以上の結果は、実験的進化についての現時点で最も詳細な分子レベルでの特性解析を示すものであり、クローン間競合と多重突然変異モデルの両方を実験的に裏づける直接的な証拠となる。

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