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免疫と進化:ショウジョウバエの自然免疫系の動的進化

Nature Genetics 39, 12 doi: 10.1038/ng.2007.60

12のショウジョウバエDrosophila種の完全ゲノム配列が入手可能になったことで、自然選択によって、自然免疫系を構成する遺伝子ファミリーの進化パターンや各種構成遺伝子間の配列の相違にどのような影響がもたらされるかを検証できるチャンスが得られた。本論文では、最近配列決定されたこれらのゲノムにおいて、245のキイロショウジョウバエDrosophila melanogasterの免疫関連遺伝子に対するオーソロガス遺伝子とパラロガス遺伝子について調べた。エフェクタータンパク質をコードしている遺伝子と、程度は劣るが、認識タンパク質をコードしている遺伝子では、シグナル伝達タンパク質に比べて、生物種間でのコピー数の違いが大きい傾向にあるようにみえる。さらに、進化的には新規である免疫関連遺伝子や遺伝子ファミリーが創出された、つい最近の、見かけ上の時期についての手がかりをつかむことができた。コドンを利用した最尤法によって、免疫系の遺伝子、特に認識タンパク質をコードしている遺伝子が、正のダーウィン選択下で進化することが明らかになった。認識タンパク質内部に存在する正に選択された部位は、微生物の認識に関与するドメインにまとまって存在していた。このことは、宿主と病原体間の分子レベルの相互作用によって、ショウジョウバエの免疫系の適応進化が促進される可能性があることを示唆している。

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