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進化:断片重複の起源を推定することにより、ヒトのゲノム進化が断続的であることが明らかになる

Nature Genetics 39, 11 doi: 10.1038/ng.2007.9

ヒトゲノム断片の重複領域は、ゲノム疾患、コピー数多型、遺伝子や転写産物の改変の原因となる、非対立遺伝子間で起こる相同組換えのホットスポットである。この領域の構成と成り立ちが複雑であることから、ゲノム全体の分子進化解析は至難の業であった。本論文では、改良型A-Bruijnグラフ・アルゴリズムとゲノム配列比較解析を併用することで、4,692の重複遺伝子座の共通起源を特定し、これらから437の複合重複ブロックを決定した。さらにクラスタリングによってこれを24の異なる重複グループへと変換した。そして、共通祖先配列から派生した重複配列間の配列の相違を示すデータやチンパンジーとマカクサルとのゲノムの比較解析をした結果は、「断続平衡」進化説を支持するものであった。今回の解析によって、ヒトゲノム断片の重複は、「コア」デュプリコン(duplicon)の周囲に形成されていることが多いことが明らかになった。このコアデュプリコンは転写産物を量産し、一部の例では正の選択を受けた霊長類に特異的な遺伝子群をコードしていた。本研究結果から、類人猿の進化の過程においてゲノム断片の染色体内重複が急速に増加し固定されたのは、こうしたコアとなる重複領域に存在する遺伝子やその転写産物が示す選択に際しての優位性に起因しているという仮説を提唱する。

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