Letter

加齢性黄斑変性症に対する遺伝的感受性

Nature Genetics 38, 9 doi: 10.1038/ng1873

変性眼疾患の1つに対する感受性に影響する遺伝的要因が、Nature Geneticsの9月号に掲載される2本の論文で探究されている。各論文の著者は、複数の遺伝子多型が組み合わさることが、遺伝による個人の疾患リスクを高める原因だと報告している。  加齢性黄斑変性症(AMD)とは、網膜中心が冒されて視力が徐々に低下する眼の変性疾患で、高齢者が失明する最大の原因の1つである。AMDの発症リスクは加齢とともに増加し、遺伝的要素や環境的要素に影響される。これまでの研究では、補体因子H(CFH)というタンパク質の高頻度変異体が、AMDに対する高い感受性と関連していることが判明していた。今回発表される研究では、CFH遺伝子内の別の複数の多型(CFHの機能に影響を与えない)もAMDの発症リスクに重要な影響を与えていることが明らかにされている。  ミシガン大学(米国・アナーバー)のGoncalo Abecasisたちの研究では、1つの集団中のAMD患者と健常者を対象としてCFH遺伝子内とその周辺にある数多くの多型を調べた。その結果、CFHをコードする遺伝子内の多型は、CFH自体を変化させないが、AMDの発症リスクに強い影響を与えることがわかった。また彼らは、複数の多型が組み合わさると発症リスクが上昇することも明らかにした。一方、マサチューセッツ総合病院(米国・ボストン)のMark Dalyたちは、別のAMD患者のグループを調べ、やはりCFH遺伝子内のタンパク質非コード遺伝子多型がAMDの発症リスクに影響することを発見した。これまでにAMDに対する感受性と別の2つの遺伝子の多型性が関連していることが報告されていたが、今回、Dalyたちは、この関連性を確認し、これと合わせて3つの遺伝子の遺伝的多型性によって個人のAMD発症リスクの大きな部分が決まることを実証している。AMD患者の兄弟姉妹は、一般の場合と比べてAMDの発症率が3〜6倍高いことが既に判明しているが、Dalyたちは、その研究対象である3つの遺伝子の多型性によって兄弟姉妹の発症リスクが高い症例の約半数が説明できると推定している。

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