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ショウジョウバエの攻撃性

Nature Genetics 38, 9 doi: 10.1038/ng1864

実験生物種の攻撃行動に関する初めての包括的な分子解析結果を報告する論文がNature Geneticsの9月号に掲載される。神経科学研究所(米国カリフォルニア州サンディエゴ)のHerman DierickとRalph Greenspanは、Drosophila melanogaster(キイロショウジョウバエ)の攻撃行動を記録し、定量化するための実験系を独自に開発した。  D. melanogasterの実験室種のほとんどは、野生種に高頻度で見られる攻撃性を急速に失う。このことは、意図的に攻撃性を選択すれば実験室種の攻撃性を回復させられる可能性を示している。DierickとGreenspanは、『two-male arena assay』を開発した。この実験系では、複数の独立した「闘技場(arena)」が設置された実験チャンバーに20対の雄のD. melanogasterを入れ、いくつかの攻撃と関連するパラメータ(頻度、強度、闘争時間のトータルなど)についての評価した(映像、静止画像参照)。攻撃性の高かった雄は、ランダムに選ばれた雌と交配させ、それを20世代以上繰り返した。その最後の世代のD. melanogasterの攻撃性は、第一世代の30倍になっていた。  DierickとGreenspanは、攻撃性の高いD. melanogasterと低いD. melanogasterの間で発現量が有意に異なる約80種類の遺伝子を報告している。その一つであるCyp6a20は、変異すると、単独で攻撃行動に著しい影響を与えた。ここまでの実験データで一般論を導き出すことはできないが、今回の研究で用いられたアッセイや実験方法は、攻撃行動の遺伝解析にとっての新たな水準となるはずである。

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