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JAKシグナル伝達はヘテロクロマチンの遺伝子サイレンシングと全体的に拮抗する

Nature Genetics 38, 9 doi: 10.1038/ng1860

JAK/STAT経路は、動物の発生において多様な役割を担っており、また、この経路の異常な活性化が多数のヒトの癌に関与している。JAK/STATシグナル伝達の効果は、主に、腫瘍細胞の増殖や生存を促進するSTAT特異的な標的遺伝子の転写を直接調節することによって発揮される。しかし本論文では、ショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)の造血系腫瘍モデルにおいて、JAKの過剰な活性化が、ヘテロクロマチンの遺伝子サイレンシング(エピジェネティックな腫瘍抑制機構)を全体的に阻害することを示す。この阻害によりSTATの直接の標的ではない遺伝子の抑制が解除されるが、これはヘテロクロマチンを介した斑入り位置効果(position effect variegation)の抑制から証明される。そのうえ、ヘテロクロマチン構成要素であるヘテロクロマチンタンパク質1(HP1)やSu(var)3-9をコードする遺伝子の変異は、JAK/STATシグナル伝達に影響を与えることなく、発癌性JAKキナーゼによって誘発される腫瘍形成を促進する。一貫して、JAKの機能喪失はヘテロクロマチンの遺伝子サイレンシングを高めるが、一方、HP1の過剰発現は発癌性JAKが誘発する腫瘍を抑制する。これらの結果は、JAK/STAT経路が細胞のエピジェネティックな状態を調節することや、ヘテロクロマチンを介する腫瘍抑制の全体的な阻害がJAKの過剰活性化によって誘発される腫瘍形成に不可欠であることを示している。

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