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核ラミナに存在するショウジョウバエゲノムの特性解析

Nature Genetics 38, 9 doi: 10.1038/ng1852

核ラミナはin vitroでクロマチンと結合し、クロマチンの構造変化に何らかの役割を果たすと考えられているが、核ラミナと相互作用する遺伝子群については、まったく知られていない。我々は、in vivoの方法を使って、B型ラミン(Lam)と結合するショウジョウバエDrosophila melanogaster遺伝子を約500個同定した。これらの遺伝子は、転写抑制状態にあって、複製のタイミングが遅く、ヒストン活性化に特徴的な修飾を欠き、また遺伝子間距離が大きかった。そして、これらの遺伝子の特性が組み合わされることにより、ラミンへの結合が決まると考えられる。すなわち、核ラミナとの結合は、クロマチンの可変・不変のさまざまな特性を踏まえておこなわれると考えられる。これに符合するように、核ラミナに近接するゲノム領域が、異なる細胞型間で一部は保存されており、また、遺伝子発現の誘導すなわちヒストンの活性化状態では、Lamへの結合が低減される。Lamの標的遺伝子はゲノム上でクラスターを形成しており、これらのクラスターは、発生の過程で協調的に発現されていた。全ゲノム解析をもとにした本研究は、核ラミナにおけるゲノムの性質や動的挙動についての明確な知見を与え、遺伝子間DNAが、核におけるクロマチンの全体的構造変化に重要な役割を果たすことを示すものである。

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