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シロイヌナズナと野生近縁種ミチタネツケバナの葉形の差に関する遺伝学的基盤

Nature Genetics 38, 8 doi: 10.1038/ng1835

遺伝子の機能および調節の差が進化の過程でどのように新しい形態を作り出しているかは、生物学における重要な問題の1つである。本研究では、近縁の2植物種、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)とミチタネツケバナ(Cardamine hirsuta)との間にみられる葉形の差に関して、その遺伝学的基盤を検討した。C. hirsutaの葉では、細胞の分化を遅延させて全裂の葉形を生ずるために、I型KNOTTED1様ホメオボックス(KNOX)タンパク質が必要である。一方、A. thalianaでは、葉にKNOXが存在せず、単純な葉形を生ずる。このようなKNOX発現の差は、上流に存在する遺伝子調節配列の活性の変化によって引き起こされている。ASYMMETRIC LEAVES1/ROUGHSHEATH2/PHANTASTICA(ARP)タンパク質が、KNOXの発現を抑制する機能は両種の間で保存されているが、C. hirsutaの葉では、ARP-KNOX調節モジュールが新たな発生プロセスを制御している。このように、ARP機能の制約を受けるKNOX調節の進化的調整は、葉原器発生の発達および分化パターンを調節することにより、多様な葉形を作り出してきたと考えられる。

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