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被子植物の胚形成では卵細胞の受精が発する正のシグナルによって内乳の増殖が開始される

Nature Genetics 38, 1 doi: 10.1038/ng1694

卵細胞および中心細胞がそれぞれ1つの精細胞と合体する重複受精では、二倍体の胚および通常は三倍体の内乳が生ずる。重複受精は被子植物を定義する特徴の1つである。内乳と胚は並行的に発生して成熟種子を形成するが、両組織の協調に関してはほとんど知られていない。シロイヌナズナArabidopsis thalianaのCdc2ホモログであるCDC2ACDKA;1とも呼ばれる)の変異を解析したところ、父系の影響が認められた。変異型cdc2aの花粉で形成される精細胞は2つではなく1つである。変異型の花粉は生存能力を有するが、胚嚢内の1細胞を受精させるのみであるため、重複受精プロセスの遺伝子レベルでの精査に利用することができる。cdc2a精細胞による受精が認められたのは卵細胞のみであった。さらに、未受精の内乳が発生することもわかり、卵細胞の受精が発するこれまで知られていなかった正のシグナルによって中心細胞の増殖が開始されることが示唆される。

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