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短い二本鎖RNAはヒト癌細胞においてDNAをメチル化せずに転写段階での遺伝子サイレンシングを誘導する

Nature Genetics 37, 8 doi: 10.1038/ng1611

遺伝子のプロモーター領域に標的された二本鎖RNA分子は、植物においてはDNAシトシンのメチル化依存的な方法(RNA依存的なDNAのメチル化)で、転写段階での遺伝子サイレンシングを引き起こすことができる。同様の機構が哺乳類のシステムに存在するかどうかはきわめて重要で、論議を巻き起こしている問題である。DNAのメチル化は、遺伝子の刷り込みおよびX染色体の不活性化などの通常の過程で哺乳類の遺伝子サイレンシングの重要な要素であり、癌抑制因子のプロモーターでのCpGアイランドの異常な過剰メチル化は、転写段階でのサイレンシングおよび癌における遺伝子機能の欠損に関連する。それゆえ、我々は、候補となる標的として内因性遺伝子CDH1を使用し、ヒト癌においてRNA依存的なDNAのメチル化がエピジェネティックなサイレンシングを介して作用するかどうかを調べた。この細胞-細胞間の接着因子の欠損は転移過程を促進し、この遺伝子のプロモーターは乳癌および他の癌において頻繁に過剰メチル化を受けている。我々は、CDH1プロモーターだけに標的された短い二本鎖RNAが効果的に転写抑制を誘導でき、これは不活化プロモーターの特徴であるクロマチン変化をともなうが、DNAのメチル化にはまったく依存していないことを見いだした。さらに我々は、事実上DNAをメチル化するどんな能力ももたないように遺伝的に変更を加えた癌細胞株において、このようなサイレンシングを達成することができた。

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