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VEGFは神経組織発生、学習、記憶にともなう海馬の活動と関係している

Nature Genetics 36, 8 doi: 10.1038/ng1395

豊かな(enriched)環境は、認知能力の向上や神経組織の発生の促進を含む、海馬の可塑性と関連している。本論文では、海馬での血管内皮増殖因子(VEGF)の発現が、豊かな環境下においても、空間迷路を施行時においても、ともに上昇していることを示す。成体ラットにおいてVEGF遺伝子を海馬に導入したところ、認知の改善をともなう神経組織の発達が約2倍に上昇した。これとは対照的に、胎盤増殖因子を過剰発現させたところ、神経組織の発生に対して抑制的に働き、学習を阻害したが、血管内皮細胞の増殖は促進した。胎盤増殖因子のシグナルは、キナーゼ挿入ドメインタンパク質受容体(KDR)を介してではなく、Flt1を介して伝達されている。また、KDRの優性阻害型変異株を発現させると、基本レベルの神経組織発生を抑制し、学習を妨害した。KDR変異体の共発現を行うと、血管内皮細胞の増殖を抑制することなく、VEGFによって促進された神経組織発生と学習が抑制された。さらに、RNA干渉法を用いてVEGFの発現を抑制したところ、環境の影響でもたらされた神経組織発生の誘導を完全に抑制した。これらのデータはVEGFがKDRを介して働き、神経組織発生と認知に対する環境の影響を媒介しているというモデルを支持するものである。

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