Research Highlights

正の選択がDrosophila mirandaにおけるY染色体退化の原動力となるという証拠

Nature Genetics 36, 5 doi: 10.1038/ng1347

なぜY染色体は機能的遺伝子座をこんなに少ししかもたないのであろうか。進化論は、Y染色体が遺伝的組換えを欠くために退化していると考える。このY染色体の退化を説明するために、正の選択と負の選択の2つの進化モデルが持ち出されてきた。なぜならどちらのモデルとも、組換えが起こらないY染色体上にその連鎖有害突然変異の反復固定を招きうるからである。両モデルの違いを明確にするため、Drosophila mirandaitari において最近作製されたネオY染色体 (neo-Y chromosome)の37 kb間における塩基の変異性(variability)のパターンを調べた。この染色体上の塩基の変異性の程度は、組換えが活発に起こるゲノム部分の30分の1しかない。正の選択モデルと負の選択モデルは両方とも変異度の低下を招くが、突然変異の頻度スペクトルに対する影響には差がある。本研究では遺伝子系図シミュレーション法の1つ(coalescent simulation法)を用いて、ネオY染色体上の塩基の変異性のパターンが有害突然変異モデル(バックグラウンド選択モデル(background selection)およびMullerのラチェットモデルを含む)にあてはまる可能性は低いが、最近の正の選択モデルにしたがうと思われることを示す。これらの結果は、正の選択がY染色体の退化の重要な推進力であることを示唆している。すなわち、雄の適応度を増大しているであろうY染色体上の少数の遺伝子座における適応が、それ以外のほとんどの遺伝子を犠牲にして生じるのである。

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