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多発性がんを有する患者における生殖細胞系列でのMLH1遺伝子の後成的変異

Nature Genetics 36, 5 doi: 10.1038/ng1342

後成的(epigenetic)な遺伝子のサイレンシングは、遺伝子の発現をなくすという点で遺伝的な突然変異に似ている。我々は、生殖細胞系列において後成的変異がいかなる遺伝子にも起こりえて、それが病気の素因となりうるという仮説を立て、がん患者のがん抑制遺伝子にそのようなことが起こっていないか探索した。本論文では、DNAミスマッチ修復酵素であるMLH1遺伝子が、対立遺伝子特異的なモザイク状の過剰メチル化を体細胞全般において示す2人の患者について報告する。どちらの患者も、いかなるミスマッチ修復酵素にも遺伝的な突然変異の証拠はみられないにもかかわらず、ミスマッチ修復障害を示す多発性原発がんを発症しており、またどちらの症例も臨床的に遺伝性非腺腫性大腸直腸がんの診断基準を満たしている。後成的変異は、2人のうちの1人の患者の精子においてもみられ、生殖細胞系列で欠損が生じそれが子孫に伝わっていく可能性を示すものである。生殖細胞系列の後成的変異は、遺伝性疾患の表現型模写を引き起こすメカニズムをもたらす。後成的修飾状態に特徴的なモザイク現象と非メンデル遺伝は、多因子あるいは複雑な遺伝形質のパターンと同じような疾患リスクのパターンをつくり出しうる。

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