Letter

ショウジョウバエゲノムに高分解能で欠失導入する系統的方法

Nature Genetics 36, 3 doi: 10.1038/ng1312

ショウジョウバエDrosophila melanogasterを用いた変異マッピングや対立遺伝子(アレル)解析、関連する遺伝子座の同定には染色体への欠失導入が必須である。一般的には、放射線照射や化学物質による変異誘発によって欠失が導入される。しかし、これらの手法では手間がかかる上に、ランダムな損傷により目的以外の二次変異を引き起し、表現型の解析を混乱させる。また既存の欠失の多くは大きく、分子レベルでみた欠失の終了点は不明確であり、また遺伝的に複雑な系統分けによって維持されている。さらに、一倍体致死や一倍体不稔性の存在により、特定領域の欠失は通常の手法で得ることが非常にむずかしく、ギャップが生じてしまう。今回我々は、系統的な方法でショウジョウバエゲノムの標的に欠失を入れ単離することで、これらの問題を解決する2つの手法を紹介する。1つ目の手法ではPエレメントにもとづいた技術を用いるもので、ハプロ不全を示す遺伝子に近接する欠失を導入し、欠失の加えられていない領域を最小化する方法である。この方法による欠失導入で、ゲノム全体の網羅率を5〜7%上昇した。2つ目の方法では、本論文と同時に発表された論文に示されているように、FLP組換え酵素や、FRTを含む多数の挿入を用いて、終了点が分子レベルで明確にわかっている遺伝的に同質な欠失519を導入した。この手法で導入した欠失によりゲノムの56%を網羅した。後者の手法により欠失終了点の予測可能な小さな欠失をゲノムレベルで任意に導入できるため、その単離がシンプルで簡便になると期待される。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度