Technical Report

異なる種間のゲノム発現パターンの比較によってみいだされた老化における共通の転写パターン

Nature Genetics 36, 2 doi: 10.1038/ng1291

我々はゲノム全体のDNAマイクロアレイによる比較解析を用いて、異なる種間の遺伝子の発現パターンを体系的に比較する方法を開発した。オーソロガス遺伝子間にみられる共通した制御パターンの存在により、遺伝子発現のプログラムに類似性があることが同定できたのである。こうした制御パターンの生物学的な特徴については、Gene Ontologyのカテゴリーに対応する高度に保存されたパターンとして同定できる。本論文で我々は、老化という生物学的プロセスの解析を例として具体的にこの方法を紹介し、また同様の手法が、そのほかの生物学的プロセスの解析にも適用できることを示す。我々は、線虫Caenorhabditis elegansとショウジョウバエDrosophila melanogasterという進化系統的にかけ離れた2つの動物において、ミトコンドリアの代謝、DNA修復、異化、ペプチド分解、細胞輸送などに関わる遺伝子が、成体になってから発現が始まるという共通の特徴をもっていることを発見した。こうした遺伝子が発現されはじめるのは多くの場合、成体になって早い時期であることがわかった。また我々は、遺伝子発現データベースを探索するのにこのアプローチを用いることによって、幼虫の発達、胚発生、配偶子形成、それにmRNA分解においても、遺伝子発現制御における保存されたパターン(シグネチャー)をみいだした。

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