Article

インスリンによるショウジョウバエの心機能老化に対する調節

Nature Genetics 36, 12 doi: 10.1038/ng1476

インスリン-インスリン様成長因子(IGF)受容体(InR)シグナル伝達は生物種を超えて寿命調節に関与しているが、その臓器機能低下の遺伝子制御における役割についてはほとんど知られていない。本論文では、ショウジョウバエにおける老化による心機能の進行性変化について述べる。すなわち1週齢から7週齢のハエでは、安静時心拍数が減少し、ストレスによる心不全発症率が増加していく。このような加齢にともなう変化は、長命となったハエでは最小限であるか、もしくは観察されない。なぜなら、全身のインスリン様ペプチド濃度が低下しているか、唯一の受容体であるInRあるいはInRの基質chicoに変異が生じているためである。さらに、ホスファターゼdPTENやフォークヘッド型転写因子dFOXOの過剰発現により、心臓におけるInRシグナル伝達のみを妨害すると、加齢による心機能低下が回避できる。このように、インスリン-IGFシグナル伝達は、寿命への全身性の効果に加えて、臓器の年齢による生理活性変化や老化に、直接かつ独自に影響を及ぼしている。ハエの心臓の老化は、加齢にともなう臓器特異的な病態変化についての遺伝的解析を行ううえで格好のモデルである。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度